関東470フリートレース観戦
'11.08.29がざごそ…
がざごそ…
中尾は今、家の掃除をしている。
キッチン、トイレと風呂はすでに、綺麗にしたようだ。
残すは部屋だけになっている。
中尾は部屋を片付けるため、まずは自分の机にてをつけた。
教科書を本棚に戻すその時。
「ピンポーン!」
誰か訪問してきたようだ。
中尾は面倒だと思いながらも、教科書を本棚に戻したあと、インターホンの受話器をとった。
「はい。どちら様でしょう?」
すると、インターホンの奥から、少しドスの効いた、されどどこか優しさが感じとれる声が飛んできた。
「こんにちわ。私はヨットの大会の感想を伺ってまわる、棚橋です。少しお話しさせて頂けないでしょうか?」
そう、中尾は、先日の土曜日と日曜日に、後輩の出場する関東470フリートレースを、テンダーの上から観戦していたのである。
中尾は一瞬迷った。
見学はしていたが、実際レースには出場していない。観戦していた感想だけでもいぃのか?と。
そこで中尾はこう聞いてみた。
中尾「観戦していた感想だけでもいいのですか?」
棚橋「もちろん大丈夫ですよ。よろしくお願いします。」
このような会話が繰り広げられた。
中尾はなぜか忍び足で玄関まで向かい、鍵を開けてから、そっとドアを開けた。
棚橋「こんにちわ。早速ですが、いくつか質問させて頂いてよろしいでしょうか?」
中尾「大丈夫です。よろしくお願いします。」
中尾は1つ深呼吸をおいた。
棚橋「まず1つお伺いします。スタートの様子です。ナショチーの人は、上からスタートするのが目立ちましたが、どう思いますか?」
中尾は、棚橋がナショナルチームをナショチーと略した事に少し唖然とし、慌てて我にかえりこう答えた。
「はい。確かにナショナルチームの人達は上の方からスタートしていましたが、私は、下1即タックを行えば、勝てはしないかもしれませんが、大きく遅れる事はないと思います。」
そう。中尾はこのレースで、スタート直後にどれだけフレッシュウィンドをうけれるかどうかが、シングルでフィニッシュできるかどうかに直結する事を痛感したのである。
棚橋「ありがとうございます。次に、あなたがこのレースで気づいた事を教えてください。」
中尾「そうですねぇ、1番大きいのは、ナショナルチームの人は、とにかく動作でもなんでも船の抵抗になる事が少ないと思いました。抵抗が少ない=艇速がつく事だと思います。これは、練習で慣れるだけではなく、長年の勘、勉強が必要だと思いました。」
棚橋「ありがとうございます。最後ですが、あなたは今後何を頑張っていきたいですか?」
棚橋は、額からでる汗を手ぬぐいで拭き、先ほどの事をメモしながら聞いてくる。
中尾はしっかりと、何かを見据えたような目をしながら、気持ちを込めて次のように述べた。
これは、頑張っていきたい。という気持ちではなく、絶対頑張る!やってやる!という強い気持ちを、誰かに訴えるような言い方だった。
中尾「私は、これからは船の抵抗を少なくする乗り方を心がけます。何をすれば抵抗にならないのか。どう動いたら抵抗が少なくなるのかを常に考えながらヨットに乗り、体を動かします。また同時に勉強をしながら乗ると、頭でもわかるようになると思います。私はこれから先誰と乗るにしろ、どんな風にでも合わせ、かつ速く疾れるような技術を身につけたいとおもいます。」
言い切った。
他にも色々あるが、これだけは絶対忘れず心がけたいと中尾は思うのである。
棚橋「大変いい目標ですね。ありがとうございます。」
中尾「こちらこそ、言葉たらずですみません。」
棚橋「全然そんな事ないですよ。今日はお忙しい中、ありがとうございました。また何かあればお伺いすることになると思います。よろしくお願いします。」
中尾「よろしくお願いします。ありがとうございました。」
そういって、中尾はゆっくりとドアを閉めた。
薄暗い玄関。ここは少し涼しい。
一息ついて、中尾は思う。
練習をするに当たり、ただ練習をするだけではダメ!と。
それでは何が必要なのか。
それは、ヨットに乗っていて楽しい!という気持ちだと思う。たまには、大声で笑いながら練習をするのもいぃだろう。
ヨットで遠出するのもいぃだろう。
何か楽しみをみつけて練習をすることが、上達する第一歩だと思う。
オン、オフの切り替えをしっかり使い、楽しみながら、喜んで1日中練習ができるようになりたい!そう思う。
「よし!」と誰もいない玄関で一声上げ、中尾はこう言った。
「明日も頑張ろう!」
気持ち新たにし、中尾は机の片付けに戻るのであった。
fin
長々とすみませんでした。
いつもと違う感じで書こうと考えながら書いていたら、いつの間にか小説チックになっていました。
長々お付き合い頂いた方々、どうもありがとうございました。
4年
中尾